脱!入れ歯!
今年は、そう決めて新年を迎えたそうだ。

本日来院されオペをした患者さんは、30代の男性。年齢の割には歯周病がひどく、合計で8本のインプラントを入れる計画を立て、本日第一弾のオペを行った。

スタートは、一番難しくまた時間がかかりそうな、上顎臼歯部を選択した。上顎洞(副鼻腔)までの距離が5〜8mmと十分でなく、ソケットリフトを併用してのオペであった。所要時間は30分とスムースにオペが終わりCTの撮影が終わると、患者さんから「えらく、簡単で本当にインプラントしたんですか?」とのお褒め(?)の言葉を頂いた。早くて当たり前。ソケットリフトは私の18番だ・・・と思っている・・・^_^;

インプラント先端にきれいにドーム状に盛り上がったCTを観ながら説明すると、ただただ感心してくれて、逆に恐縮するほどであった。終わった途端に、別の部位の手術が待ち遠しいと言う。ちょっと変わった患者さんだとも思いながら、焦らず、今日のオペ部位の経過を追いながら、別のインプラントは日程を考えましょうと伝えた。

非常に前向きな患者さんの手術は、こちらも前向きになれて、気持ちよく出来る。然るに、スムースなオペとなり、手際よく物事が運んだのであろう。

やはり、何よりも、患者さんの喜ぶ笑顔を見られるのが、歯医者冥利に尽きるというものだ。細かいことは抜きに(いや、歯医者で細かいことを抜きには考えられないか??)、生まれ変わってもまた歯科医師になりたいと思う瞬間である。
ドクターショッピング
ちょくちょくとドクターを変え、医院を渡り歩く現象をこう呼ぶが、度が過ぎるとお互いの時間の無駄となるようだ。

先日、「先生お久しぶりです。前歯のインプラント、知り合いの衛生士さんが安くやってあげるからって、歯医者さん紹介してくれるんですが、そっちで続きやってもらってもいいですか?」との電話があった。

その患者さんは2年ほど前に、前歯の破折のため、1本を抜去。即時にインプラントを埋入し、今に至っている。

元々、ある先生から紹介を受けた経緯もあり、特別の配慮をしていたつもりであったが、2次手術以降の処置費用の工面が出来なくなったとのことで、治療は中断していた。何でも、夏に海外旅行に行ってしまい、それで治療費を使ってしまったということであった。

そんな彼女から、あっけらかんとした電話があったのは、1次手術後2年も経過した先日である。2次手術以降を別の歯科医院へ託すのは、特に問題は無いが、難しいのは治療に対する責任の所在である。提携の取れていない歯科医院では、お互い不安であろう。患者さんは軽く考えてのことであったので、事例を挙げて説明し、一度、その担当となる先生とよく話しをすることを薦めた。

すると、数日経って、「器具がないので2次手術は、そちらでやってもらえますか?」とのことであった。話の内容を聞くも、今一、理解していない。患者さん曰く、その歯科医院では2次手術を行う際に用いるドライバーが無いらしいが、型取りの時に用いるドライバーはあるらしいので、2次手術は出来なく、型取りからできるそうだ。2次手術で用いるドライバーも型取り時に用いるドライバーも同じものであるはずなのに・・・である。まったく話がかみ合わないので、担当となる先生から、書面または直接お電話をいただけるように、患者さんに伝えた。

その後、すぐに患者さんから電話があり、何とか治療費の工面が出来そうなので、私のところでやって欲しいとの連絡があった。今までの話の経緯から、その紹介で行った歯科医院の先生も手を焼いている様子が想像でき、断られたのだろうと思った。

そんな折、どういう行き違いか、その紹介先の先生から私の元へ、電話があった。実はその先生、インプラント治療はするのだが、あまり経験が無く、ほとんど他院へ依頼しているそうで、今回のケースも、ほとほと依頼を受けて困っているそうだ。

自院の衛生士さんに頼まれ、軽く請け負ったが、患者さんと話すにつれ、あまりにも一方的な要求が二転三転するそうで、出来ることなら、私のほうで全て行うように話をしてもらえないかとのことであった。そもそも、1次手術をしたのは私なので、それは道理から言っても私が行わなければいけない仕事である。なるべく患者さんにはこちらで処置をしてもらえるように促しますとのことで、電話を切った。

インプラント治療は確かに高額な治療費がかかる。しかし、必ず着手する前に、総額での見積もりをお話して、納得の上で着手したはずであるが、このような結果になってしまった。

ドクターの計画性の無さも戒めるられるべきであるが、患者さん自身の計画性の無さも戒めるられるべきである。症例は患者さんだけのものではない。責任を共有する、我々歯科医師のものでもあることを、少しは理解していただけるとありがたい・・・。

ブタオペセミナー
恒例のブタオペセミナーを今年も手伝わせて頂いた。昨年は、アストラテック・インプラント・レクチャラーズ・ミーティングに参加するため手伝えなかったが、ここ数年は手伝わせて頂いている。レクチャラーズミーティングとは文字通り、アストラインプラント講師が一同に会し、アストラインプラントの最新を勉強しあう会である。昨年は、そのミーティングで、講演者の栄を授かり発表の機会を得た。スウェーデン大使館で行われたそのミーティングには、国内のアストラ公認インストラクターが30名程参加しており、久々に緊張したのを昨日のように覚えている。

さて、ブタオペとはなんぞや。

ブタの下顎を用いての、手術の練習である。ブタ顎骨は数も手に入り易く大きさも適当で、手技を研鑽するにはちょうど良いということで、私の師匠が20数年前に米国留学から持ち帰った練習法だ。今では、あちこちの講習会でブタ顎骨を用いた講習会があるが、日本に持ち込んだのは師匠であると聞いている。

ブタオペは2日間に及び、オペ基本術式やエムドゲイン、GTRなどを学ぶ。受講生は18名で2グループに別れ、私は1グループを担当した。最近の受講生はさすがに私より年下の先生が増えてきたが、以前は殆ど、私より年配の先生で非常に気を使った記憶がある。

人にモノを教えることは、非常に自分のためになる。学生や受講生の前でデモを行いながら、話すことは、緊張感の中で見本を示すことである。正に天覧試合でホームランを打たねばならぬ心境で臨むこととなる。

緊張の中で、いつもどおりのことが出来て初めてプロといえるだろう。むしろ、緊張したほうがいつもより気合が入っていい仕事が出来るというのがプロ中のプロと言える。

治療をするのに緊張しないことは無い。歯を削り、歯肉を切り、骨に穴を開ける・・・不可逆的な変化を与えることになる歯科治療を行う歯科医師で緊張しない者などいない。その緊張の中で、思うように仕事が出来なのであれば、患者さんには大変申し訳ないこととなる。

自分に過度のプレッシャーをかけ、それを乗り越える訓練はなかなか出来ることではないが、講演会や講習会を行うことは、絶好の良い機会である。

今回のブタオペも、受講生以上に自分の勉強と訓練になった。ありがたいことである。
インプラントメーカーの選択
どのメーカーを使ったらいいでしょうか?と時々、人から聞かれる。

私は迷わず、アストラ(アストラテックインプラント)かノーベル(ノーベル・バイオケア)の2社を薦める。その他にも、ストローマン(ITI)や3i、デンツプライ(フリアデントやアンキロス)、Zimmer(カルシテック)などもいいだろう。何を使ってもいいと思うが、決して国産は薦めない。

私は国粋主義者とも思えるぐらい、日本を愛してやまないが、インプラントメーカーにおいては、国産は薦めない。理由は以下の通りである。

先日、ショッキングな話を聞いた。インプラント国産メーカーの某A社の社長以下7名が、詐欺(?)で逮捕されたそうだ。インプラント以外にも医療機器の製造販売をしているそうだが、補聴器の販売で何かあったようである。おそらく、そのA社は廃業になるとのことで、そのA社を利用していた先生方はどうするのかと、お節介ながら心配になった。しかし、先生方はまだよい。システムを変更するだけだから、損害は金銭で解決するが、そんなインプラントを埋め込まれてしまった患者さんは悲惨としか思えない。

どこのメーカーでも、会社が倒産してしまうというリスクがある。特に、インプラント治療においては、倒産までなくとも、事業縮小や生産ラインの見直しで部品を扱わなくなることもある。

そのようなことからも、経営母体がしっかりしたメーカーを選び、この業界では伝統のあるメーカーの方が、いい加減なことをせずに信頼できる。

もちろん、研究データの豊富なメーカーが良いに決まっている。その点でも、国産メーカーの研究データは極端に少ない。他社のデータを都合よく流用して、もっともらしいインプラントに仕立てあげているが、臨床報告すらほとんど無いメーカーもある。

このような状態に陥っている理由は簡単で、研究費と、ユーザーの問題だ。滑沢な研究費が無いのは仕方ないが、ユーザーの問題は悪循環になっているようだ。鶏が先か卵が先かの話になってしまうが、国産メーカーのユーザーには学会発表する先生が少ない。特に国際学会では、国産メーカーのインプラントを使用した研究や症例報告は皆無である。国産メーカーも、自社のインプラントをきちんと評価して、広めてくれるユーザーを確保できず、営利主義のユーザーばかり集めてしまった報いがこのような悪循環を引き起こしている。

このような理由から、決して国産メーカーを薦めることはできない。

ふと、そのメーカーを使用して「低価格、一生保証」をキャッチコピーにインプラント治療を行っていた先生のことを思い出した。自費出版などもして、最近、第2版を出版して営業に勤しんでいたところにこの事態では、残るのは先行投資の自費出版費となってしまう。

使用していたメーカーが廃業してしまったのでは、先生がいくら頑張っても低価格で一生保証を達成することはできない。

先生も患者さんも途方にくれるしかない・・・
インプラント最新&細心事情 その2
船登先生といえば、4−Dコンセプトである。4−D、つまり3Dプラス1で、1は時間軸を意味する。

インプラント治療において、埋入位置をレントゲン写真上から決定する2次元(2D)、CT上から位置を決定する3D・・・そしてそれに時間を考慮する4Dが必要だというのが船登先生の理論である。

時期を見極め、時期を待つという考えは、江戸幕府三百年の礎を築いた徳川家康の生き方に似ている。

世の歯科医師が、インプラント治療に即時性を求めることに傾倒している昨今、時期を待ち適切なタイミングを根気強く待つには治療に対する相当な自信が必要だと思う。時間をかけ、待ちに待った挙句、お粗末な治療結果では、患者さんも納得してくれないであろう。

そういう意味でも、船登先生の4-Dコンセプトは、「症例を作る」というより、むしろ「症例を育てる」とも言うべき、プロ中のプロの仕事と思える。

そもそも、インプラント治療は、「作る」という歯科医師の直接関与より、その「育てる」といった間接的な関与であると言える。

インプラント治療の最大かつ重要なポイントは、その埋め込んだチタンと骨との癒着である。ただ単にインプラントを骨内に埋め込んだだけでは、瞬間かつ局所的に100kgにも及ぶ咬合力に耐えることはできない。チタン表面にオッセオインテグレーションという、骨との癒着が起きて初めて、インプラント治療として成功し、役割を果たすことが出来るが、その癒着を起こさせるには、正に待つ期間が必要になる。さらに、その後、インプラントを作るのは歯科技工士であったり、管理していくのは歯科衛生士や患者さん自身であることから、歯科医師はそれらを「育てる」こともまた重要なことである。

つまり、インプラント治療で重要かつ直接的な作用は、生体が起こしてくる現象であったり他者が関与するものであったりするものなので、歯科医師の関与することは間接的なものということになる。

そこで、重要な点はやはり時間である。インプラント手術後に上顎で6ヶ月、下顎で3ヶ月の待機期間が必要となる。これは、チタンと骨とが癒着してくるまでに必要な期間だが、この期間に代表されるように、骨の治癒には一定の、それも比較的長い、時間を必要とする。

そのような時間は必ず必要であるが、その待つと言う考えを一歩進め、積極的に待つと言うのが4−Dコンセプトである。

ただ待つのでなく、周囲組織をマネージメントしながら待つのである。骨再生や歯肉の移植は勿論、時には矯正により歯を挺出させ、挺出に伴う周囲組織の増生を期待しながら待つ。

この4−Dコンセプトは、船登先生仰るように、特に新しく画期的なコンセプトでなく、矯正治療や従来から漠然と行われている治療法を改めて明確化したコンセプトであるが、なかなかコロンブスの卵的な考えは、指摘されてから気づくものではないだろうか。

最後に、船登先生から若手の先生方にということで頂いた言葉にも共感する部分がある。「自分の症例の写真を頻繁に撮り、自分が師と仰ぐ人の写真と大画面で比較しなさい」。

私も、自分の師匠から「写真を撮り、常に確認をしながら日々研鑽しなさい」と教示され、それを守り、後続に伝えている。写真は全てを物語り、嘘はつかない。症例の経時的変化を追う意味で、大変重要であるが、自分の勉強としても重要である。写真の残っていない症例は症例ではない。自分はインプラント治療の大家であると吹聴していても、症例写真が揃っていなくては誰も信じてはくれまい。口で「年間1,000症例」と言おうが、数例しか写真提示がなければも、インプラント治療は数例しか行っていないビギナーと扱われるのが、我々の世界のルールでもある。

そのような考えをお持ちと言うことからも、船登先生は細心のインプラント治療と言うに相応しい治療をされていた。

小川先生の講義といい、お二人の講義内容はまさに「最新のインプラント治療を細心の心配りで・・・」といった内容であり、改めて、自分の治療コンセプトの方向性を確認できた講演会であった。
インプラント最新&細心事情 その1
本日、2人の著名な先生の講演会があり拝聴させていただいた。
1人は、UCLA歯学部ワイントロープセンターの小川隆広先生。もう一人は石川県金沢市でご開業の船登彰芳先生である。

小川先生からは、インプラント治療のエビデンスは実は少ないという話があった。学術論文を全てエビデンスと考える風潮への戒めを込め、その内容を吟味して再考察するという「Critical Review」が必要であるとの事であった。その批判的再考察をしてみると、数多あるインプラントの学術論文のほとんどは、エビデンスにならないとの事であった。ほとんど信憑性が無いと聞くと、多少不安になる内容であったが、小川先生の仰る、研究プロトコールのストラクチャの大切さは、私も米国留学時に痛感した。

そもそもアメリカ人は日常生活から批判的である。あいまいさを嫌い、白黒物事をはっきりさせないと気がすまない風潮がある。そしてその違いをきちっと見極め、それを認め合うのがお国柄ではないだろうか。決して批判的という単語が持つマイナスイメージではなく、建設的な批判であり、その物事の考え方は、学問的な推察や考察に非常に役に立つものだと思った。

私の留学の前半1年は、研究プロトコール書きで終わった。200ページもにも及ぶ研究計画書を書きながら、日本語がいかにあいまいでかつ文学的かということを悟った。

研究論文を日本語で書く際にも、この経験は生きているように思える。私は大学院時代、よく指導教授(当時は助教授)から「お前の文はお前しか分からない。科学論文は初めて読んだ人間でも、分かるように書かないと意味が無い。」と叱られたが、当時はよく真意は分からなかった。しかし、英語でプロトコールを書くと、その真意ははっきり分かった。

英語と日本語の決定的な違いは、主語、述語、目的語・・・これらの明確さにあると思う。日本語は主語を省くことが多い。

「愛しているよ」といえば、「私はあなたを愛している」という意味に決まっているので、日本語では「愛しているよ」しか言わない。しかし英語ではご存知「I love you」だ。決して「love」や「I love」「love you」にならない。

さすがに私も英語で主語を省くことはあまり無かったが、よく友人や英語の先生に「誰に?」「それって何?」「何を?」など、目的語を省いたばかりに会話が成立せず、質問されたものであった。英語で物事を考えることは、イコール科学論文を書くための良いトレーニングにもなるということに気づいた。

さて、小川先生は渡米して9年だそうだ。9年前というと、私が米国留学した時期と一致する。小川先生と比較し、自分は2年間の留学の後、ヌクヌクと日本のあいまい社会で時を過ごしてしまったと、痛烈に感じた。

インプラント治療に対し、実にロジティックに研究をされ、それを形にしていく小川先生の研究姿勢に大変感銘を受けた。

本日は、3iがバックアップしてのセミナーだったので、コマーシャルの部分もあったと思うが、それを差し引いても、勉強になった。

まずは、インプラント周囲組織、特に骨の解明である。凡人は言われていることや直感的に感じることを盲目的に信じて疑わないものであるが、小川先生はそれを疑るところから始めた。

一般的に、インプラント(フィクスチャー)表面を様々な手法により粗面構造とし、良好なオッセオインテグレーションを得ることが出来るということは知られているが、そのことを徹底的に検証した研究は少ない。そのような状況の中で小川先生は、酸エッチングによりインプラント表層が粗面になると周囲にできる骨が、硬く、剥がれ難い骨になることを実験的に証明した。

特に、酸エッチングによる粗面構造周囲の骨に発現する遺伝子を検出することにより、そのことを証明したことは、まさにインプラント治療にエビデンスを加えたといっても良いであろう。

実は数年前、商用誌であるクインテッセンスの原稿を依頼されたことがある。その原稿依頼は、小川先生の研究論文で、「ラット大腿骨に埋め込まれた酸エッチングチタン表面上での遺伝子発現について」というような題の和訳とそれに対するコメントであった。当時、浅学な私は、色々な先生に助言を仰ぎながら小川先生の論文を訳し、理解しようとしたがとうとう分からず仕舞いであった。中途半端な訳文しか出来ず、依頼をしてくださった方々に大変申し訳ないことをしたと思う。

さて、それよりもエキサイティングな内容が、「スーパーオッセオインテグレーション:Superosseointegration」なる概念である。

2009年12月に3i社から、全く新しい表面構造のインプラントが出るそうだが、その表面構造についてのサマリーの提示があった。

まずは、光活性により、骨接触率100%を得ることが出来る表面構造のインプラントが出来つつあるとのことであった。通常のインプラントは50-70%程度の骨接触率であるが、紫外線照射により活性化されたこのインプラントは実に骨接触率が100%近い数値を得ることが出来るということだ。これを、小川先生は従来のオッセオインテグレーションを超えるものなので、スーパーオッセオインテグレーションと呼んでいる。

また、ナノテクノロジーにより、200-300nmの微細なビーズをちりばめたような酸エッチング表層を作ることが出来たそうだ。酸エッチングによりチタン表面に、約1μmの微細構造を作ることが出来るが、小川先生曰く、骨芽細胞にとってちょうど良い大きさの凹凸になっているそうだ。このちょうど良い1μmの凹凸を維持しつつ、200-300nmの小さな突起を更につけることにより、天然の骨表面に酷似させることが出来る。実際SEM(電子顕微鏡)像の提示があったが、そっくりであった。

このような2つの技術単独かもしくは両者をあわせた表面構造のインプラントが、来年の年末には市場に出てくるというのはとてもエキサイティングなことで、しかもそれを開発したのは日本人であるということは大変喜ばしい限りである。

この第3世代の表面構造は、完璧なオッセオインテグレーションを2週間ぐらいで得ることが出来そうだとのことで、インプラント治療の予知性は更に向上することであろう。登場が非常に楽しみである。

船登先生の講演内容については「その2」に続く・・・・


インプラントとSEO
SEOなる言葉が巷で聞かれるようになった。数年前には全く聞かなかった言葉であるが、現在ホームページを所有する者でこの言葉を聞いたことのない人はいないのではないだろうか。

SEOとは【Search Engine Optimization】、日本語では検索エンジン最適化などと訳され、詳細は以下の通りである。
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SEO (サーチエンジン最適化)
サーチエンジンの検索結果のページの表示順の上位に自らのWebサイトが表示されるように工夫すること。また、そのための技術。Webサイト構築などを手がける事業者の中には、SEOをメニューに用意しているところもある。サーチエンジンは登録されているWebページをキーワードに応じて表示するが、その際の表示順位はそれぞれのサーチエンジンが独自の方式に則って決定している。この順位が上にある方が検索エンジン利用者の目につきやすく、訪問者も増えるため、企業などでは検索順位を上げるために様々な試みを行なう場合がある。その様々な技術や手法を総称してSEOという。
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以前、知り合いから、自院のSEO対策について参考にしたいので、当院のSEO対策について尋ねられたことがある。

結論から言うと、対策はSEO対策の王道である、コンテンツの充実しか今は行っていない。今はというのは、以前は確かにSEO業者に依頼していたからである。

思えば、2年程前、ふと・・・Yahoo!にて「インプラント」で検索したことが事の始まりであった。検索の結果、表示されてきたHPを見て大変ショックを受けた。検索上位HPの内容があまりにも薄い内容であったからだ。商用ベースで作られたインプラントの説明のページは、公正性に欠け、コマーシャルの何者でもなく、患者が求めている情報が満載されているとは言い難かった。手前味噌だが、当院のHPの方が遥かにアカデミックでインプラント治療について詳しく知ることが出来るのに、なぜ検索上位に上がってこないのかと調べ始めたのがきっかけであった。

当時の当院のHPは、素人の私が稚拙なHTMLを見よう見まねで駆使した全くのベタで、サーチエンジンフレンドリーという言葉とは対称的な位置にあった。私は、ブラウザの違いによる見え方の違いを嫌い、ページは全て画像データに置き換えて、各ページを1枚の写真で見せていた。つまり、サーチロボットはテキストデータからはそのコンテンツを理解するが、画像データからは理解できず、ページにインプラントの情報がどのくらい記載されているかは理解できない。思えば、何年もそんな状態で、大変もったいない掲載の仕方だったと反省させられた。

グーグルの基本概念である「沢山のサイトからリンクを張られているサイトが優良である」という概念も学んだ。当院のサイトは全く、外部リンクなど考えてもいなかった。

しかし、何かの宣伝でも言っていたように、いくら優れた商品を扱っていたとしても砂漠の真ん中では売れない。いくら自分でインプラントについて公正かつ適切な情報を公開していると自負していても、サーチエンジンで上位にランクされなくては、正しい知識も間違った情報に埋もれ、いつの間にか間違った情報が人々に認知されてしまうことになる。

インプラント治療は、一昔前に、その間違った認識が広まり、「インプラントは悪魔のささやき」などとのタイトルの本も出てしまった、悲惨な歴史もある。

過ちは繰り返してはいけない。そんな思いから、当院HPの再構成とSEO対策を施し始めたのが1年半ほど前であった。しかし、問題はその費用にあった。HPの再構成は、ある私の患者さんの好意で見事に生まれ変わったが、SEO業者には私としては莫大な費用を支払った。

数社のSEO業者に見積もりをお願いしたが、目が飛び出るほどの金額であったのを記憶している。「インプラント」のキーワードは、月間検索数が大変多く、ビックワードの一つである。そのビックワードを検索語として自分のHPを、Yahoo!やGoogleの検索結果の1ページ目に表示させるには、およそ1ヶ月のSEO対策費として200万円〜130万円かかるとの見積もりであった。広告費として考えても、1ヶ月100万円以上というのは、JRの大きな駅の改札正面の看板でもそこまで高くない。それだけ、効果があるということなのであろうが、そもそも、集客効果を期待してのSEO対策ではなく、インプラント治療における公正で適切な情報を広く知らしめたいとの希望から、SEO対策を講じようと思ったわけで、先行投資としての広告費としては、恥ずかしながら当院の規模を遥かに超えていた。

結局、いろいろあたり、こちらの事情も考慮していただいた、とあるSEO業者にお願いすることとなった。それでも月50万円強の出費であった。家内からは最低契約期間の半年を目安にとのことでしぶしぶOKを取り付け、対策を始めたが、結局、契約切れ寸前にYahoo!9位(1ページ目)にランクインしただけであった。契約切れ後も、こまめなアップデートを続け、最高7位まであがったが、海外出張で1週間ほどインターネットに接続できず、アップデートしなかったあたりから順位が下降しだし、今ではかなり順位を下げている。

現在は、Yahoo!とGoogleでは70-80位ぐらいになってしまっているが、MSNのライブサーチではどういうわけか、1位になっている。コンテンツをきちんと評価していただいているからか・・・それとも、何かの偶然か・・・

とにかく、今はコンテンツをコツコツとアップデートすることぐらいしかしていないが、そのような直向な努力は歯科治療、インプラント治療に通じるものがあると勝手に解釈し、そのような努力が報われないことは無いことを信じている・・・。
インプラント治療のサポーターと後継者 その2
優秀な日本の工業製品を根底から支えているのは、実は、下町の町工場であるという事実が世間にアナウンスされてから久しい。

旋盤技術やレンズを磨く技術など、一流の大企業が製品を作り出す基の機械や技術を創り出しているのは、町工場の職人さんだそうだ。詳しい話はさておき、その町工場では働き手や後継者が不足しており、深刻な状況にあると時折、メディアの特集に取り上げらているのも目にする。

実は、歯科界も似たような状況にある。「その1」で保険治療の枠組みのため歪んだ料金が、技工所の経営を圧迫し、士気を低下させていることは述べた。そこで、今、歯科医院は盛んに、その枠組みから外れる自由診療へと、積極的に経営基盤をシフトして、生き残りに躍起になっているのが現状である。

ただ、そこが問題でもある。

お金が貰えるから仕事をするのでなく、仕事をしたからお金をもらうという原則から外れる行為がしばしば目につく。

つまり、仕事は、いくら利益が出るからするものではなく、その仕事が感謝されその感謝に対する対価でいくらの利益が出るはずであるが、先にそろばん勘定ありきの医院運営では、医療とはいえない。医はまずは仁術であり、その仁術を施すために算術も必要で、仁術を笠に着た算術では如何なものかと思う。

昨今、インプラント治療のエビデンスが確立され、患者ニーズも高まり、歯科医院経営者はインプラント治療に経営の活路を見出すために、インプラント治療を導入し始めている。

インプラント治療は、適切な処置と管理を行えば、現在の歯科医学の中で最も安定した治療結果を得ることが出来る。まさに、完成度の高い治療法である。

しかし、治療自体の完成度が高ければ、それに伴う術者の技量と製品の完成度も高くなるのが当然である。十分な基礎知識や臨床知識と技術に、精度の高い製品と技工物があって初めて、インプラント治療の利点を100%引き出すことが出来る。また、それを長く永続させるには、口腔管理の徹底も必要である。

当然、それには沢山の人々の労力が必要で、当然、その対価はそれなりのものとなって然るべきであるが、目に見えない人々の労力を金額に表すのは難しい。難しいので、患者さんもなかなか理解できず、インプラント1本○○円と聞けば、安い方に気持ちが揺らぐのは誰でも同じであろう。

しかし、以前ににもこのブログで主張させて頂いたが、安さには理由が必ずあるものである。量販できるものであれば、大量仕入れの薄利多売という商売の仕方はあると思うが、インプラント治療は決して電化製品のようにはいかない。インプラント治療においての安さの理由は、精度と労力を犠牲にしてのことであると理解して良い。

それらの、犠牲が直接的または間接的に、インプラント治療の信頼性を損ない、そのサポーターや後継者達の犠牲につながらないかと懸念している。そのためにも、真のインプラント治療を続けていかなくてはいけないと思うのは、私だけであろうか・・・。



インプラント治療のサポーターと後継者 その1
後輩の一人が今度開業するということで訪ねて来た。

開業医は勤務医と違って、治療だけ行えば良いわけではなく、経営経理から、不動産、建築や果てはごみの出し方までありとあらゆる事を考えなくてはならない。

開業に際し、院内システムの参考にしたいということで、問診票やちょっとした院内の書類など、また、技工所を紹介して欲しいとの事で訪ねてきた。

当院での技工所は全部で7つの技工所にお願いしている。保険治療全般、義歯、審美治療、前歯部インプラント、臼歯部インプラント、オールセラミックス、矯正・・・とそれぞれの得意とする分野に、技工物を振り分けお願いしている。

その中で、保険治療のD技工所を紹介して欲しいとのことであった。理由は保険治療であってもしっかりとした仕事をしているからだと・・・確かにD技工所は保険治療という範疇で、金額以上の仕事をしている極めて稀な技工所だ。

周知のように、保険治療とは治療費が決まっている。上手な先生がやってもそうでなくても、料金は一緒である。当然、上手な技工士が作製してもそうでなくても同じ料金となる。たとえば、1個3,000円のインレーを技工士に発注するには、当然技工料は3,000円より高くなるはずがない。想像すれば明白だ。1個3,000円で、オーダーメイドの指輪やイヤリングが作れるだろうか?それも材料費込みで・・・このような非現実的な治療費を押し付けられているのが今の歯科界である。そんなしわ寄せはいつの世でも、下請けに近いところが被るのが世の常である。

必然的に、保険治療の技工を請け負う優良な技工所は少ない。優秀な技工士は自分の技術を高く買ってくれる(評価してくれる)仕事に傾き、そうでない技工士は辞めて宝飾関係の仕事に転職するか、オーダーメイドの指輪を作るよりも高い技術と知識が必要であるが、1個1,000円程度の報酬しか得ることの出来ない仕事を、まさに医は仁術ならぬ忍術と耐えながら、命と共に金属を削ることとなる。

あまり公の場で発言するのにふさわしくはないかも知れないが、当院での保険治療は赤字である。当院だけではなく、日本中の歯科医院は少なからず同じ傾向にある。まさに医は仁術の何者でもない。

有資格者である歯科医師と歯科衛生士が30分間かけて、インレー1個治療しても3,000円の医療収入で、技工士への支払いが安くても2,000円程度になる。光熱費や機器備品などの諸経費を入れなくても、単純に30分で1,000円の差益であるが2人で仕事しているので、1人の利益は500円である。30分500円なので、時給1,000円であり、その程度の仕事なら、何も専門知識を得ずして出来る仕事は他にも沢山ある。

さて、歯科医院ですらこのような状況なのだから、そのサポーターである歯科技工所はもっと切実な問題であるようだ。高騰する金属に、上限の決められた料金であれば、当然利益となる技術料の配分が少なくなる。技術料が少なくなれば、量を稼いで収入をまかなうしかなく、それが質の低下につながっている。まるで過日、日本経済が陥りそうになったデフレスパイラルのような状況にあるのが、ここ数年の歯科界だ。

話は元に戻るが、当院で保険をメインにお願いしていたD社からこの年末に電話が来た。D社の技工士が2人ほど辞めてしまい、廃業の危機もあるということだ。実にもったいない話である。保険治療の範囲内の料金で、仕事も速く確実で正確。申し分のない仕事ぶりで非常に感謝していたが、やる人がいなくなっては仕方ない。急遽、他の技工所に仕事をお願いすることになった。

そんな事情を、その訪ねて来た後輩に話すと残念そうにしていた。ここ数年、どんどんと高い志を持つ歯科医療人が少なくなってきていると話が一致した。

歯科治療は、当然、一人ではできない。出来なくはないが、完成度の高い仕事は一人では出来ない。優秀な歯科医師に、歯科衛生士、助手、歯科技工士・・・各々の守備範囲を見事に守り、オーケストラのように調和が取れて、初めて完成度の高い仕事ができるものである。

サポーターや後継者たちが居て、歯科治療は支えられ、支えられていくものだと思うが、今の保険医療制度に、その明日を見出すことは出来ないのは大変遺憾であるといわざるを得ない・・・

せめて自費診療でそのサポーターと後継者を育てて生きたいと思うのだが、それもなかなか難しい問題である。・・・>その2へ続く
あけましておめでとうございます
旧年中、皆様には大変お世話になりありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

今年は実家に1泊だけ帰った。年々、帰郷できる日が短くなり今年はとうとう、1泊だけとなってしまった。もう少しのんびりと田舎の正月を楽しみたかったが、なかなか日程が思うように調節できない。

本年は大きな決意をした。実家の改装だ。現在の家は、30数年前に父が建て、10数年前に改装しているが、風雪の厳しい地方の家は傷みやすく、また、両親も年をとっているのでそろそろ、人に優しい家にしてあげようとなった。以前より、家内や義妹から実家での冬の厳しさを指摘され改装を提案されていたが、そこで生まれ育った私たちには、あまりピンとこなかった。夜、部屋の中で息が白くなろうが、朝、起きると部屋の中が氷点下になっていようがそれは当然と理解していたからだ。

しかし、昨年は家内が私の実家に電話をするたびに、母が調子が悪いと聞き、決して寝込まない父は、数日寝込む日があったと聞いた。年をとるとちょっとした出来事からガタガタと体調を崩し、そのままとなってしまう。親孝行も兼ね、兄弟妹で家でも建て替えてあげれば?との提案が家内から再びあったのは暮れの話である。

早速、実家に帰り、兄弟妹が集まり両親がいなくなった間に、作戦会議を開いた。両親がいては話しは決まらない。2人だけになった実家を改装するなんて、反対するに決まっているので、引越し日まで決めてから話すつもりである。義妹は南国出身ということもあり、以前から実家の建て替えを弟に提案していたそうだが、弟も本気になってくれなかったそうだ。妹は、今年、自宅を新築することになっているので、ついでに良いと同意してくれた。自宅ができる夏以降であれば、改装中の両親の生活の場は任せろとのことだ。

今回、建て替えではなく、改装にとどめるには理由がある。現在の実家は父が29歳の時に建てた。建坪60坪弱の平屋で、当時、子供心にも広い家を建てた父を偉大に思えた。今、改めて自分に当てはめても偉業と思える。そんな実家に対する思い入れは、我々以上に両親は持っているはずだ。その自宅を取り壊し近代的な家にすることは、あまり快くは思わないのでないかとの配慮からだ。(予算的な理由もあるが・・・)

さて問題は改装業者である。

弟や妹の思い当たる業者もあるが、今一、本当に良いのかわからないとのことであった。私も、私の要求に応えられる業者があるのか不安だ。特に今回、改装するからには徹底的に老体に優しい構造と機能を装備させるつもりである。私のこだわりに応えてくれる改装業者はどこにいるのだろう?

ふとそんなことを考えていると、ひょっとして患者さんはこんな気持ちで歯科医院を探しているのかなぁ・・・と思った。

歯科治療は建築に似ている。特にインプラント治療はまさに建築である。基礎となるフィクスチャーを埋入しその上に歯を作っていく。費用も家の改装まではかからないが、それでも覚悟を必要とする出費である。

探しに探して、私たちを選んで下さった患者さんの期待を裏切ることのないよう、今年も1症例1症例、大事に取り組んで行きたいと改めて決意した年頭であった

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