インプラントの精度 その1 咬み合わせ
インプラントの精度というと主に2箇所の精度があげられます。

1つは咬み合わせの精度です。
咬み合わせには、垂直的な咬み合わせと水平的な咬み合わせがあり、この両方の精度は非常に重要なことです。

しかし、重要だということは患者さんに説明していますが、実際、なぜそれが重要かと言う事はあまり詳しくは説明していないと思いますので、ここで詳しく説明したいと思います。

まず、インプラントと歯(天然歯)の構造を理解する必要があります。重要な点は、インプラントは骨とダイレクトに癒着していますが、歯は歯根膜という靭帯を介して骨とくっついているという点です。この歯根膜の働きを考えると、なぜ、インプラントでは高精度の咬み合わせが必要かがわかります。

歯根膜の厚さは200-250μmほどあります。靭帯ですから硬い皮のようになっており、歯と骨を強固に結び付けています。歯根膜は非常に色々なことをしており、重要な組織ですが、咬み合わせに関係していることだけを抜粋してみましょう。

--歯は生理的動揺がある

歯の骨が歯周病などにより、なくなってしまうと揺れるのは知られていますが、健康な歯でも若干の揺れがあります。それを生理的動揺といい、それはどのくらいかというと200μm以下としています。この生理的動揺、つまり歯の“遊び”分があるから、歯科治療は成り立っていることもあります。人間の手によって作られる、冠や詰め物は、厳密には誤差があり、構造上、“遊び”がないとセメントで着ける時に、浮き上がりを生じてしまうため、最初から“遊び”を設けもいます。この話は、次回「インプラントの精度 その2 土台と冠の隙間」に詳しく述べることにし、歯の“遊び”がなぜ重要かについて考えてみます。
誤差を吸収できる、“遊び”が沢山あればあるほど、誤差を吸収できるので、精度はあまり要求されません。ですので、逆に言うと、“遊び”がないものは高い精度を要求されるということになります。
ではインプラントはどうでしょうか?歯根膜はありません。つまり、骨やチタン自体がもつ、タワミ分(数μm)ぐらいしか“遊び”はありません。実際、それらのタワミは“遊び”にはなりません。なぜなら、タワミはバネのように絶えずインプラントに継続的な力をかけることになり、その力はインプラントをだめにさせます。
よって、歯であれば200μm程度の精度で済みますが、インプラントであれば理論上0μm・・・つまり誤差0が要求されます。
ゴルフで例えるなら、グリーンを狙う(一般歯科治療)のか、直接カップを狙う(インプラント治療)のかぐらいの違いがあるかと思います。

--歯根膜の自動調整
歯が矯正などにより、骨の中を動くことができるのは、歯根膜があるおかげです。歯は押されたり引かれたりすると、押された方向にある骨を溶かし、引かれた方には骨を作ることができます。この仕事をしているのが、歯根膜です。この歯根膜のおかげで、一定の“遊び”が確保され、時には、歯が動くことにより咬み合わせを自動的に調整しています。この歯根膜がインプラントにはありません。ですから、自ら微調整をしてくれる歯の治療では、歯根膜の自動調整範囲以内に収めてあげれば、後は歯の方が勝手に調整してくれることになりますが、インプラントでは最後まで、歯科医師の手により調整をしないといけません。
上と同じようにゴルフで言えば、ピン側に寄せてOKを出してもらえる「遊びのゴルフ」とルール通りカップに入れないと終了しない「正式のゴルフ」の違いと考えると分かりやすいかと思います。



歯科治療では医療の中でも、元来、高い精度が要求される仕事ですが、その中でも、インプラント治療はさらに高い精度が要求される治療だということを理解して頂けたと思います。

次回は、更に咬み合わせより、精度が必要な「インプラントの精度 その2 土台と冠の隙間」についてお話したいと思います。
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歯科インプラント治療 | 2007/08/28 6:28 PM
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